#15 プロダクトマネージャーに求められる役割
今回はDNX Venturesの湊さんの「米国PdMの実態(Fun facts)」という連続ツイートを元に、プロダクトマネージャーの実態・求められる役割について書きたいと思います。
この内容は以下のPodcastで話した内容をベースに、書き起こし時に抜粋・編集したものになります。
(元ツイートはこちら)


ツイート内容の振り返り・一言コメント
(抜粋)


プロダクトマネージャーの専攻、出身の選考について。大学での専攻データ見ると、工学系、要はエンジニアリングがトップで、次いでビジネス系がとか人文科学系が多い。実はそこまで大差はない。エンジニアリングバックグランドが必須という話が5年前くらいにあったのですが、実際はそうでもないかなというファクトが面白いと思いました。


ハーバードのビジネススクールでMBAを取った人のうち約7%の方がプロダクトマネージャーになると。1学年1,000人弱で70人も新しくプロダクトマネージャーが生まれている。それが、1つの大学から生まれていると考えると、向こうでいかに産業としてのTech企業が非常に一般的になっているというのが、すごい面白いなと思います。
マッキンゼーの新卒社員数は確か70人ぐらいと言われています。成長していく産業はポジションがどんどん増えていきます。ハーバードも大きい大学ですが、そのたった一つの大学から毎年70人もプロダクトマネージャーが生まれるのは、「Tech企業の中にプロダクトマネージャーあり」みたいな構造から考えると、すごく自然な感じだなと自分としては読みました。


1位が圧倒的に社内政治。職種上、ステークホルダーが多いため、納得です。オペレーションの舞台、カスタマーサクセス、セールス、経営とか、とにかく色々な方々と調整しなくてはいけないため、その調整をうまく計らう上で政治、ポリティクスがどうしても起きてしまうのは仕方がない。それを乗り越えるからこそ、いいプロジェクトが生まれるという意味では、やらなければいけないマスト事項だと思います。しかし、もう少しヒトに向かうより、コトに向かいたいという気持ちは自分にも存在するので分かります。
2位が能動的タスクと反射的リアクティブなタスクを両立しなければならないこと。本当にその通りだと思います。いわゆるマイルストーンみたいな形で、プロダクトの進捗・展望を同時に日々、運用する中で上がってくるバグレポートやお客様からの使い勝手に対するインサイトに対してリアクションするコンテクストの違いみたいなものを、うまくマネージしながら仕事をしていくのは、大変だし嫌なところでもあるというのも、すごく気持ちとしてはわかります。


収益のインパクトはプロダクトマネージャーがいる(プロダクトマネジメントが最適化される)と利益が34%増すみたいです。そういうサーベイがあるらしいですが、正直分からないです。プロダクトはどこまでいってもプロダクト自体がミドルマンとしての役割なので、最後は価値が本当に出たかというのを測りづらいところはあるかなと思ってます。
また、プロダクトマネジメントがあることで利益が出るというのは、誰でもそう思うとも思います。例えばプロダクトマネージャーがいないと、その会社とか、ソフトウェアエンジニアリングなどを、どこに対してリソースを向けて良いか分からないとか優先度を間違ってしまうとか。正しいインパクトに正しいアライメント、アサインメントはされないとか。
そういう問題を解決するという職種だと思うので、プロダクトマネージャーがいることで、全体の整合がとれるという、戦略と実装が一致していく、例えばコストが下がる、トップラインを伸ばすための施策が適切に行われ、結果として利益が生まれるというのは、全くイメージと違わないかなと思います。
プロダクトマネージャーに求められるもの
ここからはツイート内容を見て、自分が思ったこと・持論についてまとめます。
プロダクトマネージャーの責務・役割




ツイートでも、学歴・職歴等のバックグラウンドやコードスキルが必要かどうかに言及がありますが、いわゆる「プロダクトマネージャーがコード書くか書かないか議論」はそろそろ終止符を打った方が良いと思っています。
個人の意見としては、一連の流れでもある通り、プロダクトマネージャーはコードを書かなくて良いと思っています。コードを書いてたら、本職としてのレバレッジが失われるぐらいに思った方が良いかなと。
というのも、プロジェクトマネージメントは複数のステークホルダーがいて、多くのイシューがあって、そこにどうプロダクトを位置付けていけば良いか、それに対して正しく作るにはどうしたら良いかということに対して責務を負い、戦略と実装を一致させるという役割を担う職種であると思っています。
「向かうべき先を示して、全体をアラインさせて、その進捗を管理して、うまくいってない理由を見つけ出して、それを解く」というループにおいて、集中しても手が足りないくらいイシューがどんどん出てくるため、この面に集中して欲しいというのが、プロダクトマネージャーに本当に求めることだと思います。
その上で「これを全部やりきったとしても、リソースが50余っているのでコード書きます」となるケースがあったとしたら、それは明確にマーケット選定をミスしていると思います。「PMFしているプロダクトにそんな余裕はない」というのが持論です。
プロダクトマネジメントに集中した方が良いため、その手段としてコードを書くことが有効なことは、僕はそこまで多くはないかなと思ってます。
コードが書けるか書けないかは全く別の議論
他方で、向かうべき先を示して全員をアラインしたり、その進捗を管理したりする時に、様々なSaaS・ツールがあったり、複数の人が見てるものがあったりします。そういったものを統合してコストを下げていくことに対しては、コードを書く必要性というのは結構あると思っています。
実はプロダクトマネージャーは、社内ツールを一番使う・作る人なのではという印象があります。全体が見ているSlackチャネルにKPIを毎日計算して送るものなどを自分で作っていましたが、全体をアラインするという意味ですごいレバレッジがかかることだったなと思っています。こういう、ちょっとしたコードぐらいは書いても良いかなと。
前述の通り、コード書くか・書かないかについては書かない方が良いと思っていますが、書けるか書けないかは全く別の議論で書けた方が良いと思っています。
個人的にはプログラムを作って扱って改善してという経験自体が、そのままスケーラブルなメタ認知に昇華できると考えています。
例えば自分でSpreadsheetにデータベースを簡単に作って、アプリが簡単に作れるノーコードのツールにし、それを利用して人に提供してみたらバグレポートが来て直したり、機能追加したり… その過程の中で拡大再生産していくことは、チームでプロダクトを作るということなので、どこに躓きがあるか、大きくなったり人が増えたりするとどういう問題が起きるか、一定イメージがつくようになります。
コードが書けるというよりは、プロダクトを実際に作って提供して運用してみるということ自体が、プロダクトマネージメントの職能に非常にレバレッジがかかると思うので、Mustに限りなく近いNice to haveというイメージがあります。
プロダクトマネジメントにグレードがあるとしたら、高いグレードにいこうと思えば思うほど、この能力は必須に近づいていくと思います。
BizDevやデザイナーと三位一体となって
より大きなマーケットへのエントリ
最後に今のトレンドでのプロダクトマネジメントの重要さみたいな話を。


日本は500兆円ぐらいGDPがあって、広告市場が6兆円くらい。日本で一番大きいインターネット系の企業の一つであるヤフーが取ってきたものが、この広告市場だと思います。6兆円をインターネットで切り取ってきたというのが非常に大きい。コマースでみても、eコマースは全体の6%ぐらいしか比率がなくて、小売市場150兆のうちの6%。その一部をホリゾンタルに切り取ってきてるという状態です。
その延長でまだまだ産業としてπが大きな業種もあります。例えば製造業は22%ぐらいで100兆超。こういう大きい産業をより効率化させたり、GAFAが入ってこなかった領域や取りこぼしている領域(一つ一つのローカルとかバーティカルに適切な要因を全世界で薄く提供することは難しい)において、このバーティカルを取るために、SaaSが生まれていっていると思っています。
そういうマーケットを取っていくようなソフトウェアやテクノロジーがすごい脚光を浴びる時代においては、プロダクトマネージメントの役割はもっともっと大きくなっていくと思っています。
バーティカル時代における戦略と実装の一致
広告の場合は、コードそのものがプログラマティックになり、広告自体をプログラムで定義できて、それによってコードがそのまま収益を生むというのがGAFAが大きくなったロジックの大部分。AWSなども同様です。
ただ、このバーティカルの時代において、コードそのものというのが生み出す価値というのは、単体では生まれないという風に考えています。
産業(=そのバーティカル)において何が価値で、その価値をどうやってコードは増幅したりとか、100の価値を出すときのコストを100ではなく1にできるのかとか、そういうレバレッジの掛け方が必要になってくる。
そうなると、その産業における価値の出し方というものに、どんどんテクノロジー側もアラインしていく、うまくフィットさせていく必要があります。この難しさが、SaaSの難しさだと思います。だからSaaSはオペレーションと言われる。Salesがいて、CXがいて、R&Dがあり、その上でプロダクトを業界に対してフィットさせていくということが必要になる。
「技術ができること・できないことは何か」という、Techと産業のフィットを見出していくことがプロダクトマネジメントの役割になってくるのかなと思います。これをプロダクトマネージャーという職種だけでやろうと思うと絶対に足りません。
プロダクトマネージメントという内的なマネジメント以外に、産業理解のように、産業に対してTechできることできないことみたいな分けていったり、その中でレバレッジがかかるもの・コストカットができるものといっ仕分けをし、優先度をつけていく。
ある種BizDevみたいなポジションが、プロダクトマネージャーと組み合わせることで、戦略と実装を一致させ、その産業に対してTechをフィットさせていくってことが初めてできると思っています。
ということもあり、10XではBizDevとプロダクトマネージャーはかなり混ざり合ったような働き方をしています。この2つのロールのコラボレーションはものすごい大事であり、もしかしたらここにデザイナーも入ってくるかもしれません。デザイナー、プロジェクトマネージャー、BizDevが三位一体となって、Techをどうやって産業にアサイン、アラインしていくかを練り上げて作っていく必要がある。つまり、この2つ3つのロールが混ざり合うポジションだなという風に思ってます。
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